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2020-21シーズンのリバプールは相次ぐCBの負傷に、アンフィールドでの6連敗、噴出したスパーリーグ構想騒動などピッチ内外でトラブルに見舞われた。しかし、一時は絶望的かに思われたCL出場権もアリソンの劇的決勝弾を筆頭に”小さな奇跡”を積み重ねリーグ戦をなんとか3位で終え確保した。本記事では「リバプール本の紹介」を2020-21シーズン 振り返りと併せてお届けする。
EUROも盛り上がりを見せており、欧州フットボールは完全なオフシーズンとはならないが、シーズンの合間のリバプール成分補給になれば幸いだ。
戦術・戦略編
1冊目は『組織的カオスフットボール教典』。悲願のプレミアリーグ初制覇を果たした19-20シーズのピッチ内のメカニズムが図解とともに整理されている。賞味期限の短い内容にも思われるが、苦しんだ20-21シーズンを振り返るヒントも隠されている。1章から5章にかけて〈トレント・アレクサンダー=アーノルド〉、〈DF陣のボール保持〉、〈「アンカー」の重要性〉、〈ゲームメイカーとしてのプレッシング〉、〈機能本位の中盤〉の順で扱われていることから、筆者のチャンピオンチームへの評価が伺える。一方で、3位に終わった昨季は早々にCBの1から3番手の大怪我によるシーズン終了。これに端を発する多くの問題が見受けられた。本職の主力離脱によるクオリティの低下は勿論のこと、ファビーニョやヘンダーソンを本職で起用できないことにより中盤は機能不全に陥り、チームの”レジスタ”であるTAAに充分な時間と空間を届けることにも苦心した。単純なCB不足だけでなく、優勝シーズンのキーポイントに挙げられる部分に問題が連鎖的に生じてしまったことが不振の要因だろう。
『組織的カオスフットボール教典』ではクロップの人材管理能力やモチベーターとしての側面への評価が構築するチームの戦術的緻密さを矮小化していると主張し、ピッチ上の現象に焦点を当てている。一方で クロップのフットボール哲学や人間性 については『ユルゲン・クロップ 増補版』で多く語られている。バックルームスタッフも含めたチーム作りに定評のあるクロップを現役時代からマインツ、ドルトムントでの監督キャリア、リバープールでの18-19シーズンのチャンピオンズリーグ優勝までの道のりで振り返る伝記のような本になっている。緻密な戦術を遂行するために不可欠なリーダーとしてのクロップを知るにはうってつけ。
続いてはLFCラボにも寄稿されたことのある結城康平さんの一冊『“総力戦”時代の覇者 リバプールのすべて』。こちらもリーグ優勝をテーマに書かれたものではあるが、ピッチ内の事象だけでなくコーチングスタッフやフロント、「フットボール」に迫る項目など内容は多岐に渡る。最後に優勝で浮かれたラボメンバーの座談会があるのもおすすめ。数あるテーマのなかでもラインダースへの深い言及はクロップ就任から現在に至るまでのゲームモデルの変遷を語るうえで外せない。”ヘビーメタルフットボール”にポジショナルプレーの要素を組み込む作業は道半ばと思われるが、昨季はスカッド構成に緊急事態が続き見ることは叶わなかった。持ち越された「2シーズンのリーグ戦で僅か4敗のチーム」の変革が今季どのような方向に向かうのか楽しみだ。今夏のマーケットでは早速35mポンドを投じて最終ラインにスピード豊かなコナテを加え問題に着手したリバプールの本気が伺える。しかし、中盤で誰よりも長くプレーしたワイナルドゥムは拍手の中アンフィールドを去った。チアゴ・アルカンタラも馴染み、カーティス・ジョーンズの成長も著しいがユニットとして中盤の再構築は迫られ、ファビーニョ不在時のアンカー問題も未だ残る。チーム強化を握るフロントと現場スタッフを含めた総力戦となる現代のフットボールクラブの全体像を知るには欠かせない1冊。
リバプール特集雑誌編
近年のタイトル獲得記念や、”対ペップシティ”のイメージの影響もあってか各誌でも特集が組まれたリバプール。有難いことにラボメンバーも多く執筆に携わらせて頂いた。まだまだ優勝の余韻に浸りたい方、写真集的に眺めたい方は今からでも遅くない!
レジェンドの本棚編
リバープールのレジェンド選手たちの伝記も多数出版されている。こちらも是非確認を。
トーレスがJクラブのユニフォームを着た本が出るとは夢にも思わなかった。
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