嵐, くるり, Suchmos... YNWAの精神を感じさせるJ-POPを選んでみた | ページ 2 / 3

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琥珀色の街、上海蟹の朝　／　くるり

画像出典：amazon.co.jp

続いて紹介するのは、くるりがバンド結成20周年を記念して世に送り出した『琥珀色の街、上海蟹の朝』です。もう曲名が刺激的過ぎますね。大好きな曲です。

くるりとしては初となるR&B/ヒップホップ路線の曲で、これを使っておけばそれっぽくなる魔法のフレーズ“シティポップ”の感じが漂っています。ちなみに曲の舞台が上海である理由は、岸田繁が感じていた上海へのノスタルジーの現れだそうです。

歌詞は基本的に暗く、重苦しさを感じさせますが、〈上海蟹食べたい　あなたと食べたいよ〉という部分で一気に鬱蒼とした雰囲気を吹き飛ばします。そして、そんな上海蟹をあなたと食べたくなる直前でぶっ放される〈君はもうひとりじゃないから〉というリリック。これのお陰で、無事YNWAの精神が宿っていると判定することができました。

既出ですが、YNWAには〈At the end of the storm, there’s a golden sky〉という歌詞があります。「嵐の向こうには、金色の空」といったところですが、ラストの〈長い夜を越えて行くよ　琥珀色の街〉はYNWAの雰囲気が個人的にリンクするんですよね。“琥珀色の街”というワードは、“金色の空に照らされた街”、という意味ではなく、幻想的で煌びやかな都市のことを指していると思いますが、行きつくところは同じな気がします。

例えば嵐の『GUTS！』は歌詞だけ見るとトップクラスのYNWA指数を誇るのですが、曲調というか、曲の雰囲気はYNWAとはやや離れたところにあると思います。翻ってこの『琥珀色の街、上海蟹の朝』は、歌詞こそ『GUTS！』にYNWA度で及びませんが、曲が持つ全体的な印象はより近いものを感じさせます。背景にあるものは重たく暗いけど、それを弾き飛ばすような展開が待っている。歌詞だけでなく、そういった意味でも非常にYNWAの精神を感じさせる一曲と言えるのではないでしょうか。

しかし、私がこのナンバーからYNWAを感じ取るのはリリックや曲全体の印象だけというわけではありません。この『琥珀色の街、上海蟹の朝』のEPには、『Hallo Radio – QURULI ver.』という曲が収録されています。そしてこの曲の歌詞には、ある言葉が使われています。さて、それはなんだと思いますか？

とりあえず、一番の歌詞を見てみましょう。

こころ空回りの歌をいつもいつも歌ってた

あいつは昼間から Radio チューニング合わせてた

時計の針は正午カウントダウンはじまるドキドキ

あいつの歌が流れ出す信号待ちの交差点

君と同じリバプールからトランジスタ・ラジオ

誰もいない放課後のプールサイドで歌ってた

君のメロディー遠く離れても

この車の中で歌うのは

誰も知らない思い出のメロディー

燦然と輝いていますね、リバプールの文字が。この『Hello Radio』という曲はラジオのキャンペーン・ソングでして、前述の通り作詞・作曲はくるりの岸田がしているのですが、何人ものアーティストが楽曲制作に参加し、歌いあげています。メンバーは大橋卓弥（スキマスイッチ）、木村カエラ、KREVA、ディーン・フジオカ、藤原さくら、そしてYONCE（Suchmos）です。ちなみにユニット名はザ・プールサイド。

さて、気になるのは〈リバプールからトランジスタ・ラジオ〉という歌詞ですよね。これは間違いなくRCサクセションの『トランジスタ・ラジオ』という曲に対するリスペクトでしょう。この曲には〈ベイエリアからリバプールからこのアンテナがキャッチしたナンバー〉という歌詞があります。

まぁ十中八九リバプールからキャッチしたナンバーは、リバプールが生んだ史上最高のロックバンド、ビートルズでしょうね。岸田もビートルズめちゃくちゃ好きですし、そういうのもあって歌詞に盛り込んだんだと思います。リバプールといえばビートルズだ！って人も多いですからね。

ただめちゃくちゃ惜しいのが、リバプールFCのサポーターとしてもお馴染みであるSuchmos・YONCEの歌割りが〈君と同じリバプールからトランジスタ・ラジオ〉の前後なんですよね。リバプールの部分をリバプールファンに歌ってほしかったぜ…！ちなみに詳しい歌割りはこの記事を見るとわかりやすいです。

そしてここまで来ると余談も極まるんですけど、この『Hello Radio』をカネコアヤノにカバーしてほしい。曲の雰囲気も絶対合うし、なによりカネコアヤノの口から合法的にリバプールを聞けるのまじで神すぎるので。俺のオタクみたいなところが出てしまった。いやカネコアヤノって誰だよって人がほとんどだと思うんですけど、俺が今一番好きなアーティストです。名前だけでも覚えて帰ってください。

ちなみにカネコアヤノの中でYNWAの精神を感じさせる曲を選ぶならこの『祝日』というナンバー。〈いつまで一人でいる気だよ〉という歌詞が決め手。

それとビートルズといえば、『琥珀色の街、上海蟹の朝』は歌詞の中に〈isn’t it a pity〉という言葉が出てきますが、ジョージ・ハリスンに同名の曲があるのでそこからもリバプール要素を見出せるかもしれません。ちなみにジョージには『Shanghai Surprise』という曲（なんなら同名の映画を作っている）もあったり。

話を戻しますが、前述の通り『琥珀色の街、上海蟹の朝』には、くるりがセルフカバーした『Hello Radio』が収録されているということで、つまりこのEPはYNWAの精神を感じさせる曲もあれば、歌詞にリバプールが出てくる曲もあるというわけです。魂が震えますね。とりあえず私の人生のやってみたいことリストの一つに「上海に行って『琥珀色の街、上海蟹の朝』を聴く」というものがあるので、絶対に叶えたい所存。

なかなか寄り道が多かったですが、そういうわけでこの『琥珀色の街、上海蟹の朝』はYNWAソングでありながら、同時にリバプールソングでもあるのです。まじでどういうわけなのかはあまり突っ込まないでください。突っ込まれる前に次に行きましょう！

イチゴのショートケーキ　／　如月マロン（ジェラードン）

画像出典：amazon.co.jp

ふざけた曲名とリバプールのレジェンドっぽさを感じさせる歌手名。というかこれを一から説明しないといけないのかなり大変なことに気が付いてしまった。皆さん知ってます？ジェラードンって。

まぁざっくりと説明すると、ジェラードンという吉本興業所属のお笑いトリオ（メンバー：海野裕二、かみちぃ、アタック西本）がいるんですけど、そのジェラードンのネタに「握手会」ってものがあるんですね。そのネタから生まれたのがこの『イチゴのショートケーキ』という歌で、如月マロンとは、かみちぃがネタの中で扮しているキャラクターの名前です。まぁ百聞は一見に如かずということでネタを見て下さい。きっと面白いです。

けっこう楽しんでいただけたんじゃないでしょうか。私は初めてこのネタを見たとき誇張抜きで腹を抱えて笑いました。でもジェラードンっていう名前に気を取られ過ぎてそれどころじゃない人もいるかと思うので、もう説明しちゃいますけど、このジェラードンという芸名は我らがスティーブン・ジェラードから来ています。当たり前ですね。逆にジェラード関係なかったら奇跡過ぎます。

なんでジェラードンかというと、命名した海野曰く深い意味はなく、ただ単に好きなジェラードとリザードンを合体させただけとのこと。海野は大のサッカーファンであり、サッカー部としてもガチでやっていた人。そして一番好きな選手がジェラードというわけなんですね。個人的にはジェラードから名前を付けちゃっている以上、彼らを応援しないわけにはいかないと思っています。

@_____fr
ポッチャマかゼニガメです！笑
マジで意味はないですよ！
ただ、ジェラードとリザードン合体しただけです！笑
— ジェラードン海野 (@uminoyuji) March 13, 2014

さて、件の『イチゴのショートケーキ』ですが、この曲は基本的にかみちぃ演じるアイドル・如月マロンが歌いながら、西本演じるオタク役のごろうさんが合いの手を入れていくという展開で曲が進んで行きますが、突然マロンがアイドルとして作った声ではなく、素の声で歌う箇所があります。それがこの部分

光のさす方へ　走り続け

時には立ち止まってもいいさ

君は一人じゃない

共に手を取り合い

さぁゴールしよう

出ましたね、〈君は一人じゃない〉。どういうつもりでこの歌詞を入れたかは分かりませんが、YNWAの精神をひしひしと感じます。ゴールという言葉も、素直に受け取ればゴールテープでしょうが、どうしてもサッカーを連想させます。

ただ、作詞はかみちぃと西本なんですよね。西本もサッカー好きっちゃ好きですが、おそらく海野ほどではなく、過去のツイートからもジェラードというサッカー選手に関してあまり詳しくは知らないように見られます。かみちぃは完全にバスケの人なのでサッカーはそもそも門外漢です。

そう考えると、YNWAっぽい歌詞は狙ったわけではなく偶然説もあります。もちろんクレジットに名前がないだけで、海野の意見が反映されている可能性も否定できませんが…。とはいえ、海野はジェラードが好きと言ってもリバプールが好きとまでは言ってないんですよね。なのでYNWAを歌詞に盛り込むほどかな？っていう疑問もあります。

まぁでも個人的には普通にジェラードンの大ファンなので、なんとか彼らには売れまくってほしいといつも思っています。というか過去に彼らの紹介記事をLFCラボで書こうとしたことすらあったんですよ。結局お蔵入りになったけど。握手会のネタでバズってた頃なので、もう3年半ぐらい経ってます。