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2月10日、アンフィールドでのバーンリー戦で、前半を終えて1-1と苦戦していたLiverpoolは、後半にサブで出場したハービー・エリオットの2アシストを含む大活躍で3-1と快勝した。その日のマッチ・オブ・ザ・デイでは、エリオットが話題の中心を占めた。
「エリオットが15歳でフラムの最年少クラブ記録を塗り替えた時には、あの左利きの若手は誰だ?と注目を集めた。Liverpoolに入ってからは、エリオットの才能は間違いなかったが、毎年プレミアリーグとCLで優勝を狙うようなクラブでバリバリ活躍することは難しいものだ。その困難の中で、エリオットはLiverpoolで97試合に到達した」と、アラン・シーラーは語った。
実際にエリオットが歩んできた道は、普通のいばらの道よりもはるかに険しいものだった。2019年夏に16歳でLiverpool入りしたエリオットは、プリシーズンにファーストチームの試合を経験した直後に、3か月前の不徳行為が発覚してFAから14日間の出場停止処分を受けるという最悪のスタートとなった。
Liverpoolファンとして育ったエリオットは、友人宅で数人の仲間で一緒にLiverpool対トットナムのCL決勝戦(Liverpoolが2-0で優勝)をTV観戦している時に、ハリー・ケインを「F*** Monk(※このやろう、という感じの暴言)」と呼んだ、その動画がインターネット上に漏れて、FAの目に止まったという次第だった。まだフラムの選手だった時で、16歳の世間知らずの少年がやったことだったが、ライバル・ファンに絶好のネタを与える事件となった。
その後、エリオットはブラックバーンで大成功を収めたローンを経て、Liverpoolで定着し始めた2021年9月に、リーズ・ユナイテッドでの試合中にひざを脱臼して担架で運ばれる深刻な負傷に倒れてしまった(試合結果は3-0でLiverpoolの勝利)。
18歳のエリオットに対する心からのお見舞いが飛び交う中、エリオットは、自分の負傷のきっかけとなったタックルをした相手パスカル・ストライクに対して、不運な事故だから気にしないでとメッセージを出した。2年前に、ケインに対する不道徳な暴言でFAから処分を受けた若者のイメージとは正反対の、理性的で思いやり溢れる言葉だった。
そして、5カ月間の欠場の後に復帰したエリオットは、2022年2月7日に、アンフィールドでのFAカップ4回戦で、Liverpoolでの初ゴールを記録した(対カーディフシティ、試合結果は3-1でLiverpoolの勝利)。
スタンドにいたお父さんは、感涙をこらえられなかったと明かした。「ハービーは、アカデミーチームに入る前の、庭でボールを蹴っていた頃からLiverpoolファンだった。アンフィールドで、コップの前でゴールを決めたとは、その頃からの夢がかなったというものだ。あのゴールがどれほど大きなものだったか、ハービーの表情を見れば明らかだった」。
「この5カ月間が本人にとってどれほど苦しかったか、たぶん、誰もわからないだろう」。
かくしてエリオットは、苦しい道を克服し、Liverpoolでの出場数100のマイルストーンが見えるところまで到達した。
ファンの間では、今季は特に主としてサブで出てきて試合を変える活躍を見せていたエリオットを、「新スーパーサブ」と称するようになった。これは、オリジナルのスーパーサブであるデビッド・フェアクラフ(1975–1983)が、得点が必要な時に出てきて必ず期待に応えたことから授かった称号で、今でもファンの間で語られるほど根強い支持を受けていた。その現在版がエリオットだった。
「エリオットは、サブで出た時は必ず素晴らしいプレイをする。スタートするよりインパクト・サブとして効果的な戦力だ」と、あるファンが言った。「たぶん、ベンチで試合を見て何をすべきか頭の中で組み立てられる頭脳があるのだろう。まさに新スーパーサブだ」と、ファンは頷き合った。
ファンの言葉を引き取るかのように、マッチ・オブ・ザ・デイのマイカ・リチャーズは語った。「エリオットは、Liverpoolではサブとして使われているが、おそらくプレミアリーグの殆どのチームでは毎試合スタートする主力になる程の才能を発揮している。ただ、Liverpoolのベンチにいるのはもったいないからと出て行くことを考えないで欲しいと私は願っている」。
「悲惨な負傷を乗り越えてより強くなったエリオットは、次のステップに進む能力を持っている選手だ」。
*本記事はご本人のご承諾をいただきkeiko hiranoさんのブログ記事を転載しております。
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