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6月13日の金曜日に、フロリアン・ヴィルツの移籍に関してレバークーゼンとLiverpoolの間で条件に合意したという報道が流れた。移籍金は固定で£100m、条件を満たせば追加で£16mという、Liverpoolのクラブ史上で獲得の方の最多移籍金記録となる。この夏の移籍ウィンドウ第二弾が6月16日にオープンするのに合わせて、ヴィルツは週末のうちに休暇先から戻って来てマージーサイド入りし、メディカルと契約にサインという工程を終えて正式発表と見られている。
現在22歳のヴィルツは、レバークーゼンのプレイメイカーとして、クラブ史上を塗り替えた2023-24季ブンデスリーガ初優勝シーズンにリーグの最優秀選手賞に輝き、ヨーロッパ中が注目する才能として名をとどろかせていた。言うまでもなく、ヴィルツの名前はLiverpoolファンの間でも頻繁に話題になっていたが、レバークーゼンが£125mと評価額を提示するまでもなく、誰の目にも「高すぎて手が出ない選手」と映っていた。
案の定、今年の5月初旬にマンチェスターシティがヴィルツを狙っているという噂が出た時には、Liverpoolファンの間で、「シティがまた強くなると困るから、ヴィルツがバイエルンミュンヘンに行くことを祈っている」という声が出たほどだった。実際に、その時点ではバイエルンがヴィルツの行く先として「ほぼ確定」と言われていた。
ところが一転して、5月23日にドイツのメディアが「ヴィルツのLiverpool入りはほぼ確定」と報道し、続いて6月1日にはLiverpoolがレバークーゼンに正式なコンタクトを取ったことが伝えられた。それから10日間に渡る交渉の末に、両クラブ間で合意に達したということだった。
実質的に正式になってから地元紙リバプール・エコーが明かしたところでは、ヴィルツがLiverpool入りの決断を固めその意向を表明したのは5月23日だったという。ヴィルツのエージェントでもあるお父さんを始め、スポーツマン&スポーツウーマン揃いの10人兄妹の末っ子として生まれ育ったヴィルツは、重要な決断に際して必ずご家族とじっくり話して決めてきた。2024-25季を終えて、自らの今後の行方を決めるに際して、ヴィルツ家は家族会議を開いて様々な角度から3つの選択肢を検討した。来季もレバークーゼンに留まる、バイエルンミュンヘンに行く、プレミアリーグで新たなチャレンジに挑む、というのが選択肢だった。
まず、レバークーゼンに留まるのは無理と断念した。優勝監督のシャビ・アロンソはレアルマドリードへと去り、ジェレミー・フリンポンはLiverpoolへ、ヨナタン・ターはバイエルンへと行ってしまった。自分も次のステップに進むべきだという結論に達した。次の選択肢であるバイエルンは、長いことヴィルツにとってもご両親にとっても最大の候補だった。ところが、ご両親がバイエルンを希望していると伝えた頃から、バイエルンが「釣った魚に餌入らない」的な対応になったことから、ヴィルツ家ではバイエルンに対する見方が変化したという。
そんな時にLiverpoolの話が来て、ヴィルツはイングランド入りしてアルネ・スロットと秘密の会合を持った。スロットはチームの戦略とヴィルツのLiverpoolでの役割について明確な考えに基づいてはっきり説明したことで、ヴィルツの心はLiverpoolへと傾いたという。対するバイエルンは、戦略に関しては不明瞭で、ドイツ代表チームのチームメートでもあるジャマル・ムシアラとの役割分担についても明確な回答は得られなかった。それ以外には、2024-25季のCLで対戦した後に(試合結果は4-0でLiverpoolの勝利)、レバークーゼン一行がLiverpoolの招待を受けてアクサ・トレーニング・センターでウォームダウン・トレーニングを行った際に、ヴィルツはその近代的な設備に感銘を受けたと話していたという。アンフィールドのスタジアムとファンも、大きなプラス要因だった。
そしてヴィルツは、5月23日にバイエルンに対して、「Liverpoolに行くことに決めた」という断りの決意を伝えた。バイエルンは、直前にヴィルツがイングランド入りしたという噂を聞きつけて、負けに気づいたという。レバークーゼンは、ヴィルツを失う覚悟はできていたが、バイエルンに取られることを苦々しく思っていた。これまでもバイエルンは、ドイツ人の有望若手を当たり前のように横取りし続きて優位を維持してきた。いくら大金を積まれても大切なヴィルツをバイエルンに渡したくない、という気持ちがあった。それだけに、ヴィルツがバイエルンを蹴ってLiverpoolを選んだと知った時には、レバークーゼンは大喜びで、一刻も早くこの話をまとめたいと積極的になったという。おそらく、その気持ちが情報漏洩となり、ドイツのメディアはヴィルツのLiverpool入りを「実質的に確定」という前提で記事を掲げ始めた。
更に、レバークーゼンは、Liverpoolのスポーティング・ディレクターであるリチャード・ヒューズの正確でプロフェッショナルな対応に感銘を受けたという。そのため、当初はヴィルツの移籍金として£125mと公言していたレバークーゼンは、最終的には£116mで合意したという次第だった。
クラブ間の交渉が続いている最中も、ドイツのメディアはヴィルツのLiverpool入りを既成事実として様々な報道を流した。その一つが、ヴィルツのLiverpoolでの背番号に関する不穏な噂だった。2020年5月に17歳で27の背番号でレバークーゼンでファーストチーム・デビューを飾ったヴィルツは、主力として身を立てた2023-24季にNo.10のシャツを受け継いだ。そこで、「ヴィルツはLiverpoolでもNo10が欲しいと希望を出し、現在No.10を着ているアレクシス・マック・アリスターにお願いすることになった」という、根も葉もない記事だった。これに対してヴィルツは、「僕は他の人を尊重している。嘘の記事を信じないで欲しい」と、噂を否定した。あたかも、Liverpool入りは決まっていて背番号は空いている番号から選ぶと宣言したようなものだった。
Liverpoolファンは、「ヴィルツ(Wirtz)は水曜日(Wednesday)に決まる?」とか、「フロリアン(Florian)だからフライデー(Friday)だろう」と、ジョークを言いながら、僅か1カ月前には憧れの若手選手だったヴィルツが本当にLiverpoolに来ると決まる日を待ち焦がれた。
「フロリアン・フライデー」となった6月13日に、BBCのドイツ担当ジャーナリストは語った。「ヴィルツはこの夏最大の目玉移籍の一つになるだろう。Liverpoolはスーパースターを獲得することになった」。
*本記事はご本人のご承諾をいただきkeiko hiranoさんのブログ記事を転載しております。
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