ユルゲン・クロップの最もスペシャルな優勝杯

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平野 圭子
LIVERPOOL SUPPORTERS CLUB JAPAN (chairman) My first game at Anfield was November 1989 against Arsenal and have been following the Reds through thick and thin

2月25日、ウェンブリー・スタジアムでのリーグカップ決勝戦で、Liverpoolは延長で1-0とチェルシーに勝って通算10回目の優勝に輝いた。リーグカップ歴代優勝回数では、2位のマンチェスターシティの8回を更に引き離して、Liverpoolは記録を更新することになった。いっぽう敗れたチェルシーは、決勝戦6連敗という不名誉な記録を塗り替えることになった。

両チームの顕著な差異は勝敗だけではなかった。スカイスポーツのガリー・ネビルは、「ユルゲン・クロップの子どもたち(キッズ)が£1億のボトラーたち(※肝心な時に力を発揮できず負けることを指す、イングランド・フットボール界の典型的表現)を打ち破った」と叫んだ。実際に、チェルシーはトッド・ベーリーがオーナーになった2022年から現在までに、戦力補強資金として合計£1億超を投入していた。

対するLiverpoolは、試合終了の時の11人中5人が20歳以下の、「ユルゲン・クロップの子どもたち」だった。それは、本来はスタートしただろう主力中の主力、モー・サラー、トレント・アレクサンダー・アーノルド、ディオゴ・ジョッタ、ダルウィン・ヌニェス、カーティス・ジョーンズ、ドミニク・ソボスライという面々が一斉に負傷欠場中だったため、アカデミーチームの選手たちが決勝戦に投入されたのだった。

中立のメディアやアナリストの絶賛を受けたのは、それら若手たちに加えて、118分の決勝ヘッダーを決めたフィルジル・ファン・ダイクだった。「引率の校長先生みたいだ」と、スカイスポーツのコメンテーターがジョークを言ったファン・ダイクは、主将として若いチームをリードし、攻守の要を果たした。

スタンドのファンも優勝に貢献した。延長に入って、アレ・アレ・アレが大音量で響いた時、「Liverpoolファンはこの時間になってもこれだけの声を出せるほど強靭な喉を持っている」と、実況のアナウンサーがポツリと言った。ファンは、「アカデミーチームの選手たちが頑張っている姿を見て、たとえどうなろうとこのチームはスペシャルだと誇りを感じた」と、後から語った。

折しも、決勝戦の2日前に、ジェイミー・キャラガーがLiverpoolのアカデミーチームのディレクターであるアレックス・イングルソープと談話し、成功の背景が話題になったところだった。

「クロップが監督になってから今に至るまで、性格が理由でダメになった事例が一つもないことが誇りだ」と、イングルソープは語った。「レベルが足りずに成功できないとしたら、それはそれだ。しかし、素質を持っていながら、例えば派手な車に乗るとか、目につくような高給腕時計を付けるなど、くだらない態度の問題でファーストチームのコーチ陣やスター選手たちにネガティブな印象を植え付けた結果、才能を開花する前にいなくなるということはあってはならない」。

イングルソープは、10年前にディレクターに就任して以来、給料の上限額(年額£50,000)、1.3リットル以上の車は禁止、トレーニング中は携帯電話の使用禁止など、アカデミーチームでいくつかの厳格な指導を導入した。「例えば、トレントは何年も同じ車に乗っていたし、毎日同じトレーニングウエアを着て通っていた。今のアカデミーチームの選手たちは、トレントをお手本として行動している」。若いうちから規律を身につけた選手たちは、才能が認められてファーストチームに入った瞬間から先輩たちに可愛がられ、面倒を見てもらえる。

「選手たちの才能と努力に加えて、クロップの存在は大きい。4-0で勝っている試合で最後の10分間に若手を出す監督は他にもいるが、クロップは、アカデミーチームの選手たちを育てる方針を唱えるだけでなく文字通り実践している。Liverpoolはリーグカップの決勝戦を控えているが、アカデミーチームの選手たちは決勝進出に重要な役割を果たした」と、イングルソープは締めくくった。

ふたを開けると、アカデミーチームの選手たちは、決勝進出だけでなく、優勝に大きな役割を果たした。

「私の監督としての20年間のキャリアの中で、最もスペシャルな優勝杯だ」と、試合後の記者会見でクロップは語った。「このチームの選手全員が、アカデミーチームの全てが素晴らしいキャラクターを持っている。驚異的なことに、我がチームは優勝にふさわしいパフォーマンスを見せた。選手たちは決意を発揮した。今日ほど誇りを感じたことはない。チームをサポートしてくれたファン、クラブのスタッフ、全てを誇りに思う」。

*本記事はご本人のご承諾をいただきkeiko hiranoさんのブログ記事を転載しております。

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