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3月21日のアウェイでのブライトン戦の前に、ジェームズ・ミルナーが、古巣対戦に際して、BBCのインタビューで自らのプレミアリーグ最多出場記録と、これまでのキャリアを振り返った。24年間、6チームで主力として657試合を戦ってきたミルナーにとって、ベスト監督は?という質問に対して、ミルナーは、ファンとして育った故郷の古巣リーズ・ユナイテッドで、デビューさせてくれたテリー・ベナブルズ、そしてサー・ボビー・ロブソンという二大イングランド人監督に言及し、「1人だけ選ぶのは大変だ」と前置きした上で、ユルゲン・クロップを上げた。
「オールラウンドな面でユルゲン・クロップ。人間として、そして人格者として。彼のお陰で僕はものすごく成長できたし、彼から多くのことを学んだ。彼とは常に本音で話し合い、100%信頼できた」と、ミルナーは語り、クロップのマン・マネジメントについて補足した。「ハーフタイムのチームトークで、ガッツリ怒られるだろうと覚悟していたら、すごく優しく接してくれたり、逆に、前半は自分でも絶好調というプレイが出来たと思っていたら、いきなり雷を落とされたり。それは、気を抜かずにやれという意味だ」。
2015-16季のEL準々決勝で、クロップの古巣ドルトムントと対戦した時のことだった。1戦目を1-1でこなした後のアンフィールドでの2戦目で、ドルトムントは牙をむいたような猛攻で圧倒的優位に立ち、前半を終えた時点で1-3と敗退は不可避に見えた。でも、後半はLiverpoolが大奮起して4-3と逆転し、通算5-4で準決勝進出を達成した。ミルナーは、「ハーフタイムに、監督から怒鳴られるだろうと思ったし、怒鳴られて当然という出来だった。でも監督はすごく冷静で、『君たちは良く出来ているのだから、後半もこの調子でやりなさい』と、褒めてくれた。あれ?と思ってよく考えたら、確かに得点経過は負けていたが我々もチャンスを作ったし、決して悪くはなかった。そう思うと自信がわいてきて、後半は落ち着いて自分たちのプレイが出来た」と、クロップのマン・マネジメントの一例を明かしたことがあった。試合後のインタビューでクロップは、大逆転は選手たちの功績だと強調したが、ミルナーはクロップのお陰だと知っていたし、ファンも真相を見抜いていた。
「彼が来た時のLiverpoolは、プレミアリーグ優勝には程遠いところにいた。だから、彼が築き上げたものは本当にスペシャルだった」と、ミルナーは締めくくった。
ミルナーのBBCのインタビューは、Liverpoolファンの間で大きな話題になった。「クロップは、Liverpoolを再びヨーロッパ中が一目置く強豪に復帰させ、プライドとアイデンティティを据え付け、ファンを含むクラブ全体に深い絆を張り巡らせた。そして、懐疑心を信頼に変えた」と、ファンは感傷に浸った。「クロップが9年間いてくれたことに深く感謝しているし、クロップは比類ない監督だから、同じくらいすごい監督が来ることはあり得ない」。
クロップが去った時には、次にカリスマ的な監督が来るまでの間、しばし低迷することは避けられないと、誰もが覚悟した。昨季は特殊な事情も重なって、プレミアリーグ優勝という偉業を達成したが、それは期待をはるかに上回る結末だった。むしろ、今季の落ち込みの方が当初の予想に近かった。
そして、3月21日、ミルナーがスタートしたアウェイでのブライトン戦で、Liverpoolは2-1と負けて直近のプレミアリーグで3試合無勝となった。その3試合は、降格ほぼ確実と言われているウルブスに2-1、残留争い中のトットナム・ホッツパーに1-1、この試合の前は12位と絶不調で監督交代が話題になっていたブライトンと、事前予測では3試合で7ポイントは必須だろうと言われていた対戦相手に、合計僅か1ポイントに終わったのだった。
直前のCLラスト16の2戦目で、ガラタサライに4-0(通算4-1)と快勝し、「Liverpoolは今度こそ、上昇気流に乗るだろう」と期待が上がった矢先のことだった。ブライトン戦でプレミアリーグ10敗となり、監督(ブレンダン・ロジャーズ)がクビになった2015-16季以来の悪い記録に並んだ。
トップ5の直接のライバルであるマンチェスターユナイテッドとチェルシーも揃ってポイントを落としたため、順位表では辛うじて5位に留まっているが、直下のブレントフォードとエバトンとは僅か3ポイント差になっていた。
ファンの間では、この3試合のショッキングな戦績から、残り試合を控えて暗いムードが漂い始めていた。クロップが築いたものが崩れてしまい、再び、懐疑心から信頼の立て直しが必要になっていた。問題は、アルネ・スロットがその立て直しを出来るのだろうか?ということだった。
トットナム・ホッツパー戦の前に、マイクル・オーウェンは、「こう言うと笑われるかもしれないが」という前置きで、意外な発言をして世間の話題になった。「選手たちのレベルという面では、Liverpoolはプレミアリーグでトップだと思う。今の成績では低迷しているが、選手の実力を比べたら、Liverpoolの方が首位独走中のアーセナルよりも上だと思う」。オーウェンの見解が正しいとすれば、勝てないのは誰のせいなのか、自明のことに取れた。
そして、現在の不調は昨季の後半から始まったものとは、誰もが気づいていることだった。昨季はプレミアリーグ優勝の業績が大き過ぎたため、ネガティブな面は殆ど話題にならなかった。ブライトン戦の後で、タイムズ紙はそれを指摘した。「Liverpoolがチャンピオンらしい試合が出来なくなったのは昨季のこの時期からだった。最近38試合(※プレミアリーグの1シーズンの試合数)では僅か61ポイントで、通常は7-8位でヨーロッパのカップ戦なしという成績だ」。
ウルブス戦の後で、ジャーメイン・ペナント(Liverpool在籍は2006–2009)は、スロットが自分の責任を認めないことを批判した。負けた試合の後で敗因を問われてスロットは、常に(自分以外の)誰かを理由として上げていた。多くの場合は相手のローブロック戦略だが、ブライトンはローブロックではないので負傷が理由として選ばれた。もちろん、試合直前にアリソンとモー・サラーが負傷欠場となった上に、ウーゴ・エキティケが試合開始8分で負傷のため交代した打撃は大きかった。ただ、誰もが気づいている戦略の誤りに関しては、一言も触れなかった。
エキティケが続行不能となった時に、ベンチにはフォワードが2人いたのに、代わって出たのはミッドフィールダーのカーティス・ジョーンズだった。ディフェンスが負傷で緊急措置が必要だったわけではないのに、後半は3人のミッドフィールダーが入れ替わりバックフォーを勤めた。
スティーブン・ジェラードは、前の試合から僅か62時間の間隔でイングランドの南端で行われた試合で、負傷欠場の2人以外は同じラインナップで臨んだことが大きな過ちだったと指摘した。それは、例えば、ガラタサライ戦ではマン・オブ・ザ・マッチの活躍をしたミロシュ・ケルケズが、ブライトン戦では後半に疲労のためフェイドアウトした様子からも明らかだった。
スロットが、14人のレギュラーというべく選手だけを使い続けていることは昨季から同じだった。プレミアリーグでは5人まで交代が許されているが、ほとんどの試合で3人程度のサブで終わっている。試合に出る選手が固定され過ぎているため、控えの選手は、いざ試合に出た時にリズムをつかむのに苦戦して思うようなプレイが出来ずに終わる。その結果、レギュラーとの差が開き過ぎて控えの選手の出場機会はますます減ると同時に、レギュラーの選手たちの過労による負傷リスクが増大する。
何より、若手が十分なチャンスを与えられず、若手が育たなくなるという、長期的なリスクもあった。
クロップの退陣の後で崩れてしまった信頼を、果たしてスロットが再び立て直すことが出来るか?という疑問に対して、肯定的な見解を抱く人は次第に減っていた。
*本記事はご本人のご承諾をいただきkeiko hiranoさんのブログ記事を転載しております。

















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