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控えのGKというのは大変な役割だ。カップ戦など限られた試合を除いて通常はベンチで終わり、試合中にGKが退場になったり負傷で交代が必要になった時にいきなり出番がくるので、常にその時に備えていることが必要だ。ましてや、普段は全く試合に出る機会がないNo.3のGKにとってハードルは一層高い。
そのNo.3のフレディ・ウッドマンが、アウェイのダービーでギオルギ・ママルダシュビリの負傷のため急きょゴールを守ることになった時には、ファンは誰もが心の中で祈る気持ちになった。エバトンの猛反撃を受けて1-1とされた直後のことで、絶体絶命のピンチと思えた。そしてウッドマンは、ファンの祈りに応えて立派に守り、失点ゼロに押さえてマージーサイドダービーの新たな「予期せぬヒーロー」となった(試合結果は2-1でLiverpoolの勝利)。
ウッドマンが昨年夏に、フリーエージェントとして2部リーグのプレストン・ノースエンドからLiverpool入りが正式に発表された時は、青天のへきれきの感があった。折しもLiverpoolは、クラブ記録の移籍金を含む多数の新戦力を獲得していただけに、ウッドマンの加入は殆ど話題に上がらなかった。ただ、元イングランド・アンダー21代表GKという経歴を持ち、プレストン・ノースエンドでは3年間で127出場のNo.1として働いたこと、ニューカッスル在籍時(2014–2022)にはプレミアリーグ4試合の経験もあった28歳のウッドマンは、No.3としては十分に信頼できる戦力と見えた。
それが、ダービーという檜舞台で証明されたのだった。
「Liverpoolからの話があった時に、どのような役割を果たせば良いかと考えた。No.3というのは初めての経験なので。ただ、それは非常に重要な役割だとすぐに実感した。毎日のトレーニングで世界のベストGKであるアリソンから直接学んで自分のプレイを向上させるだけでなく、例えばドミニク・ソボスライがフリーキックの特訓をする時のGKを勤めたり、モー・サラーがPKの練習をする時の相手になったりと、チームメートを助けることでチームの役に立てるのだから」と、ウッドマンは振り返った。
「そして、いつ出番が来ても大丈夫なように、ベンチ入りする時には必ず、僕は試合に出るのだと言い聞かせて準備を整えて臨んだ。Liverpool入りしてから今までの8か月間ずっと、それをやり続けてきた」。No.3という大変な役割を前向きに受け止めて、やりがいを感じながらチームメートのサポートに努めてきたウッドマンは、チーム内の人気者で模範的なプロだと、主将のフィルジル・ファン・ダイクと副主将のアンディ・ロバートソンが異口同音に証言した。
多くの例にもれず、GK一家に育ったウッドマンは、お父さんがクリスタルパレスのGKとして勤めていた時に、地元のクラブであるクリスタルパレスのアカデミー・チームでキャリアを開始した。クリスタルパレスのレジェンドでもある元イングランド代表監督のガレス・サウスゲートが名づけ親だというエピソードもあった。必然的に、ウッドマンは熱烈なパレス・ファンとして育った。
そのウッドマンが、マージーサイドダービーでLiverpoolでのプレミアリーグ・デビューを飾った前日の4月18日に、お父さんのアンディが監督を勤めているブロムリーが4部から3部への昇格を確定し、お父さんは4部リーグの最優秀監督賞に輝いたという、ウッドマン家にとって記念すべき出来事が相次いだのだった。そして、ブロムリーの昇格について語る立場として翌日のトークスポーツに出演したお父さんは、息子のマージーサイドダービー・デビューについて質問を受ける羽目に陥った。
「あのヘッダーの場面は絶句したが、落ち着いて良く対処した。Liverpoolでプレミアリーグの試合に出ることになるとは、しかもダービーとは、偏に驚異的だ。息子は良くやったと誇りに思う」と、お父さんは目を細めた。
ウッドマンのカルト・ヒーロー的な快挙は、翌週4月25日のアンフィールドで、古巣であり熱烈なファンであるクリスタルパレス戦で更に開花した。Liverpoolが3-1と勝った試合で、トレーニングでチームメートを助ける役割に全力を尽くしてきたNo.3のウッドマンは、5本のセーブを決めてチームの勝利に主役として働き、マン・オブ・ザ・マッチに輝いたのだった。
試合中に、スタンドから盛大に飛び交った「ウッドマンはイングランドのNo.1(※)」チャントは、ウッドマンがファンの新カルト・ヒーローとしての地位を固めたことを物語っていた。
※イングランド代表チームのNo.1であるエバトンのジョーダン・ピックフォードが、Liverpoolファンにとってジョークのネタになっていることにひっかけたチャント。
試合後に、チーム一行がファンに挨拶に行った時に、コップ・スタンドの前でチームメート全員から先導されて最前列に立たされたウッドマンが、ファンの盛大な拍手を受けた姿は、ピッチ内外で難しい問題に直面しているシーズンの中で、誰もが純粋に笑顔を浮かべる明るい場面の一つとなった。
*本記事はご本人のご承諾をいただきkeiko hiranoさんのブログ記事を転載しております。

















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