エジプトのキングの最初のお別れ

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平野 圭子
LIVERPOOL SUPPORTERS CLUB JAPAN (chairman) My first game at Anfield was November 1989 against Arsenal and have been following the Reds through thick and thin

インターナショナル・ウィークに突入した3月24日、モー・サラーが今季末でLiverpoolを去ると正式な発表があり、イングランド中の話題を独占した。これは、まずサラーが、「お別れの最初のパート」として、ファンに向けてのメッセージを収録した動画を自身のSNSにポストし、クラブから事実関係を伝える声明が続いた。サラーは昨季終幕に2年契約にサインしたばかりで、2027年までの契約だったが、クラブと合意の上で1年切り上げて今季末でフリーエージェントとして去ることになった。

「まず最初に言いたいことは、僕がこのクラブを、この町を、そしてここの人々を、ここまで重要なものとして自分の人生の中に深く根差すことになるとは夢にも思いませんでした」と、サラーは語った。自身のキャリアの中で最も重要な9年間を、共に戦って共に祝った新旧チームメートへの感謝と、その間ずっとサポートしてくれたファンに感謝をささげた。「今後はずっと、あなた方の一人として生きてゆきます。このクラブは永遠に僕のホームです。僕と僕の家族にとって。あなた方のお陰で僕は決して一人では歩きません(I will never walk alone)」。

サラーの最初のお別れメッセージは、ファンの間で、ほぼ全員一致という反応で受け止められた。12月のリーズ・ユナイテッド戦(試合結果は3-3)の試合後のインタビューで爆弾発言が出た時から、サラーが今季末で去るだろうと、誰もが覚悟を固めていた。「どんな選手や監督でもいずれは去る。サラーがいなくなることは戦力的な打撃は大きいし、ものすごく寂しいが、仕方ないことだ。何より、あの爆弾発言のために、1月に中途半端な去り方をするような最悪の事態は避けられたので、納得するしかない」と、圧倒的多数のファンが異口同音に語った。

「そして、発表のタイミングは最適だった。我々ファンもクラブも、シーズン最終日に、サラーにふさわしいお別れ会を計画するために十分な時間がある」と、ファンは悲しい笑顔で頷き合った。

同時に、フリーエージェントとして去る結論については疑問の声が上がった。というのは、どのクラブも、重要な選手を失う時には代わりの戦力を補強するために、移籍金を確保することは必須だ。そのため、出て行くことが分かっている選手が契約更新にサインすることもあるくらいだ。ところがサラーの場合は、Liverpoolは移籍金が取れる立場にあったのに、それを放棄して契約を切り上げるという決断を下したわけだった。また、サラーのエージェントが直後に明かしたところでは、サラーの来季からの行く先に関しては何も決定していないということだった。

地元紙リバプール・エコーが、2日後にこの疑問に対する回答を掲げた。まずは、サラーが今季末で去ることについては、あの爆弾発言以来、Liverpoolのクラブも不可避という判断をしていた。その前提で、純粋に財政面を考えると、サラーの契約を1年切り上げることで、クラブはサラーに支払う給料(※週給400,000の1年分で£22mに加えてボーナス)を支出から削減することが出来る。逆に、契約中の状態で移籍金を取るために行く先を探すとしたら、サラーの莫大な給料を払えるクラブという厳しい条件が入るため、移籍が成立しないリスクも出てくる。

サラーにとっては、フリーエージェントとして出ることにより、Liverpoolの意向に縛られることなく、自分の希望で自由に行く先を選ぶことが出来るし、財政面ではもちろん、新しいクラブとの契約に際するサインオン・ボーナスなど、圧倒的に有利になる。

Liverpoolのクラブは、移籍金を確保してギスギスした状況でサラーを出すよりも、サラーの9年間の功績にふさわしい、尊厳ある別れ方を選んだということだった。それは、今後の選手たちに好意的な印象を与えるメリットもある。何より、クラブのレジェンドであるサラーにとって、最良の結論を下したわけだった。

折しも、その週末の3月28日に、LFCファウンデーション主催の定例年次行事であるレジェンド・マッチのためにユルゲン・クロップがLiverpool帰還を果たし、サラーに対する心のこもったメッセージを送った。

「サラーは驚異的なフットボーラーで、プロの選手たちにとって新たな指標となるような業績を作った。彼が去ることは寂しいが、同時に、私は彼のキャリアの重要な時期を共に働くことが出来たと誇りを抱いている」と、クロップは語った。「このクラブが彼にとって最適だったことを彼は知っているし、そして、彼が我々にとって最適な選手だったことを我々は知っている。モーと私は一緒に大きな夢を抱いた。そして、実際はそれ以上の大きなものを作り上げた」と、クロップは締めくくった。

LFCファウンデーション主催のチャリティ・マッチのタイトルにもなっている「レジェンド」という言葉は、「元選手」の意味でつかわれることもあるが、本来は、フットボール界全体で偉大な選手と評価されており、長期間に渡ってその評価を維持し、リーグやCLなど超メジャーな大会で主力として優勝を達成した選手であり、かつ、ファンからスペシャルな存在と慕われる選手を指す。

そして、正真正銘のレジェンドであるサラーを、送り出す今季末までのお別れツアーが始まった。

*本記事はご本人のご承諾をいただきkeiko hiranoさんのブログ記事を転載しております。

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