永久のNo.20

The following two tabs change content below.
平野 圭子
LIVERPOOL SUPPORTERS CLUB JAPAN (chairman) My first game at Anfield was November 1989 against Arsenal and have been following the Reds through thick and thin
平野 圭子

最新記事 by 平野 圭子 (全て見る)

7月11日、Liverpoolがディオゴ・ジョッタを追悼して背番号20をリタイアする(※永久欠番にする)という決定を正式に発表した。これは、女子やアカデミー・チームを含めたクラブ全体に適用されるということで、LiverpoolのNo.20は永久にジョッタの背番号となった。7月3日に悲劇のニュースが伝わってから、ファンの間でリクエストとして上がっていたが、クラブはジョッタのご家族に相談しご家族の意向を聞いてからということで、今回の発表となった。その公式声明は20:20に出された。

その日は、ジョッタの奥さんを始めジョッタと弟アンドレ・シウバのご家族がアンフィールドを訪問し、チーム一行と共に、ファンや関係者がジョッタへの追悼の品を捧げている場所を訪れたという情報も伝わった。アンフィールド付近の「No.20」と記された壁に、奥さんがメッセージを記したという。奥さんのその痛々しくも毅然とした行動に、ファンは、「さすがジョッタの奥さんだ」と、目をぬぐいながら称えた。

それに先駆けて、7月13日に隣町であるプレストン市で予定されていた2025-26季初のプリシーズン親善試合が実行されるという決定が伝えられていた。言うまでもなく、その試合では両クラブ主催のジョッタ追悼が計画されていた。具体的には、元プレストン・ノースエンド選手であるジョーン・マグアイアの奥さんでミュージシャンのクラウディアがピッチに立って両クラブのクラブ歌を演奏することと、You’ll Never Walk Aloneの演奏中にプレストン主将のベン・ホワイトマンがアウェイ・スタンドの前に花束を捧げること、両チームの選手全員が黒いアームバンドを装着すること、そして試合前に1分間の黙とうが行われるという内容だった。それ以外にも、スタンドのファンと選手たちの自主的な追悼があるだろうと想定されていた。

ふたを開けると、ジョッタを偲ぶバナーやスカーフで埋め尽くされたアウェイ・スタンドの6,000人のファンの前に花束を捧げた時のプレストン主将の表情が、まず最初に実況陣の言葉を詰まらせた。ジョッタとは親しい友人という関係ではなかった筈のホワイトマンが、涙をこらえるのに苦戦していた様子は、フットボール界全体のジョッタに対する気持ちを象徴していた。

アウェイ・スタンドでは、試合前からすでにジョッタの歌が頻繁に出ていたが、試合開始20分に勃発し10分間続いたジョッタの歌は、ホームスタンドのファンも巻き込んでスタジアム中で鳴り響いた。

選手たちの追悼は、33分にコナー・ブラッドリーが先制ゴールを決めた時に始まった。ブラッドリーは、ゴールの後で無言で天国のジョッタに語り掛けた。後半に2点目を決めたダルウィン・ヌニェスは、ジョッタの定番として有名な2つの祝ゴールでジョッタを偲んだ。3点目を入れたコーディ・ガクポは、ジョッタの祝ゴールの後で両手で「20」と表示した(試合結果は3-1でLiverpoolの勝利)。

クライマックスは試合終了のホイッスルが鳴った後だった。アウェイ・スタンドのLiverpoolファンがジョッタの歌で追悼を再開した時、Liverpoolの選手たちとコーチ陣全員がスタンドの前に立ち、ファンの歌に合わせて拍手で追悼した。アウェイ・スタンド上のジャイアント・スクリーンにはジョッタとアンドレ・シウバの写真が映し出され、試合に出なかったフィルジル・ファン・ダイク、アレクシス・マック・アリスター、ルイス・ディアスという面々も加わり、全員が自発的にファンと一緒にジョッタを追悼した。

ファンがジョッタの歌を歌い続ける間中、選手たちとコーチ陣全員は言葉もなく、ファンの方を向いて拍手を送り続けた。TVカメラに映った選手たちの悲痛な表情は、チームメートであり大好きだった大切な友人を失った苦しみの深さを象徴していた。

試合前のインタビューで、アルネ・スロットは、「今この時に、適切な言葉を探すのは難しい」と、選手たちとコーチ陣全員の苦悩を語った。この試合では、前半と後半で全交代した22選手が出場した。感情的に試合に出られない状態だった選手たちは休ませて、45分間だけでも悲しみを軽減するために試合に出たかった選手たちが試合に出たということだった。プリシーズン親善試合は、通常はシーズン開幕に向けての調整のためにあるが、この試合は全く異なる目的で行われたことは誰もが知っていた。

「私は選手たちに言った。自分の感情の通りに行動しなさい、と。泣きたければ泣きなさい。トレーニングをしたいと思えばやれば良いし、できないと思うならやらなくて良い。ディオゴは常に自分の感情の通りに行動した。だから、みんなもディオゴと同じようにやろう、と」。

そして、スロットは、昨季末のジョッタの逸話を明かした。リーグ優勝記念写真を1枚選ぶように言われて、ジョッタはトットナム戦(優勝決定した試合。結果は5-1でLiverpoolの勝利)の試合後にコップスタンド前でチーム全員が肩を組んでファンと一緒にYou’ll Never Walk Aloneを歌った様子を上空から撮影した写真を選んだという。自分がアップで写っている写真ではなく、ファンと選手たち&コーチ陣全員の写真だった。それは、ジョッタがいかにファンとチームメート&コーチ陣を大切に思っていたかの象徴だった。だからこそ、ジョッタはファンとチームメート&コーチ陣にとってスペシャルな人間だった。

「ディオゴは永遠に我々の心の中に生き続ける」と、スロットは語った。

No.20が永久にジョッタの背番号となったことは、クラブとファンが永久にジョッタを思い続けるという真相を表現していた。

*本記事はご本人のご承諾をいただきkeiko hiranoさんのブログ記事を転載しております。

LFC公式オンラインストア

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA